去年に実施された仏教講座『ケネス・タナカの仏教教室』を、講演録として製本化しました。 本書は、２０１７年２月から１２月にかけて、自坊で開催された仏教講座全１０回の講義録をまとめたものです（副題の「仏教・真宗を楽しく学びながら生活に活かす講座」はケネス先生からの提案です）。また、この期間中、十月に行われた第二十七回「中村元東方学術賞」をケネス先生が受賞された際のスピーチも巻末に収録いたしました。
２０１７年は、厳念寺が台東区のこの地に移転し再興されてから２００年になります。その記念事業の一環として、武蔵野大学教授のケネス・タナカ先生に公開講座の講師をお願いすることにしました。多くの仕事を抱えている上に、２０１８年春には退官を控えて極めてご多用にもかかわらず、快くお引き受けくださったことに改めて感謝申し上げます。
毎月連続１０回の教室は、お寺としても初めての試みでありましたので、不安と期待の入り交じった中で始まりましたが、回を重ねるごとに、想像以上に活き活きとして楽しい充実した学びの集いになってゆきました。これはひとえにケネス先生のアメリカ人ならではのユーモアのあるサービス精神といつもベストを尽くしてくださったお蔭でございます。そして、この会ではいつの間にか講義の後に軽食を食べながら自由に語り合うような時間が生まれました。そんな輪の中にも、ケネス先生は喜んで入り込んでくださって楽しい良い時間を皆さんとご一緒に毎回過ごすことができました。
この教室の参加者はお仕事をしながらの世代が多かったので、なかなか毎回出席する都合がつかない人も少なからずいました。そこでお話くださった講義の内容を文字化して後日に配布することにいたしました。ケネス先生には、毎回その原稿を忙しい中で労を厭わずに校正・加筆していただけたことにも重ねて深謝申し上げます。その総まとめとしての果実がこの度の本になりました。 ケネス先生のあつい求道心を背景とした人格と、日本人にはない視点とセンスからクリアに切り込んでくる新鮮な内容がふんだんに表現された、初心者でもよく理解できる講義となっております。どうか楽しみながら昧読いただければ幸いです。
